「よくねたいも」は起こさない。

東京時代に、北海道のじゃがいも産地の方に「芋は3回おいしくなる」と教わりました。

とれたての新じゃがのいもの香りを楽しむ時期と、しっかりと完熟してから収穫した、ほくほくしておいしい晩秋以降の時期と、年が明けでんぷんの糖化が進み甘さがぐっと増す春の時期と。

先月あたりからCMを賑わしている、ホクレンさんの「よくねたいも」は、3番目の糖化が進んだ、「あまーいじゃがいも」のことですが、個人的に気になっていることがあります。

知らないという方は次のページの動画をどうぞ。→http://www.kitayasai.com/product/

東京時代、じゃがいもの収穫後のでんぷんと糖分の変化を1年間にわたって調べていたので、じゃがいもが年明けにぐぐっと甘みが増してくることは知っていました。

しかし、そのおいしさをちゃんと体感したのは函館に来てからでした。

2月頃、家族で入った居酒屋さんで頼んだフライドポテトの強烈な甘さとほんのりと残る芋の風味に思わず驚きました。

人生で食べたフライドポテトの中で一番おいしいだと!

北海道と本州で、味わいに差が生まれたのはなんなのか。

そもそも春先甘みが増すのは、冷蔵貯蔵する中で、じゃがいもが凍結しないようにでんぷんを分解して、糖分濃度を上げているからです。

濃度が濃い液体の方が凍りづらいのと同じ原理です。

しかし、常温に戻ると凍る心配がないので、増えた余分な糖分はいもの呼吸などで消費されてしまいます。

3~4月、北海道はまだ雪が残り、寒い日が続きますが、本州では桜が咲かんとする時期ですし、6月ともなれば20度後半とすでに暖かくなっています。

じゃがいもは常温で腐る代物ではない(よほどの高温であれば別です)ので、北海道から本州への配送は常温で行われます。

寒い北海道から暖かい本州に運ばれ、常温でスーパーの棚に置かれているうちに、あの強烈な甘みはどんどん目減りしていくのです。

せっかくのおいしさを活かすなら、冷蔵輸送の冷蔵陳列、家でも冷蔵保管。

よくねたいもは冷蔵でそのまま寝かせておかないとおいしさは保てません。

ホクレンさん、広告代がもったいないですよ。

ちなみに、「よくねたいも」の裏書には、記憶が定かではありませんが、「冷暗所に」だか、「冷蔵庫に」入れておきましょう、といった文句が書いてあります。

つまり、ホクレンさんも冷やしておいた方がいいと思いつつ、現実は…

あの春先の強烈な甘さを体感してもらえれば、北海道のいもが春にも爆発的に売れるのにもったいない、と思うこと7年。

どこかの心あるスーパーさん、ホクレンさんと「コールドチェーンの冷蔵陳列」&「店頭試食」の、「家庭での冷蔵保管」をしっかり謳って販売してみませんか。

八百屋の「勝手な妄想」でした。

【注】 すず辰にご連絡いただいても、ホクレンさんとのパイプはありませんのであしからず。

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