料理学会(初日)

 4/23-24と2日間に渡って、函館で開催された「世界料理学会in HAKODATE」について、
紹介します。
 今回は3回目の開催。過去2回の会場は五島軒のホールで200名強が入る大きさでしたが、
今回は、初日函館芸術ホール(800名収容)、2日目は函館国際ホテルの大広間(こちらも
収容数は芸術ホール並)と規模を大きくしての開催でした。
 気鋭の料理人たちが、自らの料理の哲学、技術、思いを語る、熱い学会です。初日は、
オープニングトークからのスタートでした。
 山形の伝統野菜の魅力を改めて世に問うている、アル・ケッチャーノ(山形・鶴岡)の
奥田政行シェフ、政財界の重鎮が通う東京の老舗、レストランTERAKOYA(東京・小金井)
の間光男シェフ、米雑誌Food & Wine magazineにて「人生を変える世界のトップ10レストラン」に
選ばれた、アロニア ド タカザワ(東京・赤坂)の高澤義明シェフ、と海外の学会に参加経験の
ある3人が、雑誌「専門料理」木村さんの進行のもとディスカッションを行いました。
 高澤シェフ:「学会の良さは、厨房の外で戦闘態勢を解いている素の料理人同士で交流
  ができる点。実は、学会のあとの夜の飲み会が一番楽しみ。」
  「海外の発表では、難しいことこそ簡単に伝えるため、映像と音楽を駆使してきた。最初
  のプレゼンのときは、プロに映像製作を頼んだが、なかなか自分の表現したいものが
  伝わらず苦労した。今は、包丁の変わりにMacを相棒に映像表現を自分で作成している。」
  (自らの料理の世界を表現することに妥協のないシェフの姿を垣間見た気がしました。)
 間シェフ:「『日本人が作る』フランス料理であることに意味がある。本場のまねでなく、
   日本人の間光男だからこそ生み出されるフレンチを意識している。また料理の発想の
   根源は、店のスタッフに伝え、その世界観を顧客に伝えるよう努力している。」
 奥田シェフ:「スペインの美食会議では、2度ピンチョスの振る舞い(会場外で招待シェフのピンチョス
   が食べられる「屋台」が並ぶ)で、どちらも長蛇の列を作った。素材をとことん攻める手法
   が海外の人たちにも受け入れられ大変うれしい。」
   また、学会の意義とはとの問いかけの中で、実行委員長のバスク(北海道・函館)の深谷
   シェフが登壇し、「皿に料理人の人生が映える。その生き様が熱く語られるのが学会の
   醍醐味だ」と締めくくりました。
 さて、最初の発表は、震災を受けた宮城・塩竃のシェ・ヌーの赤間善久シェフ。
 まだ、フランス料理がなじみのない中、試行錯誤しながら、「フレンチ」を隣近所
に浸透させていくオープン当初のお話。修行時代の、「素材を活かす姿勢=
茹でることを大切にしたこと」などなど。そして震災の被害の中、店から数百m
離れたところで発見した冷蔵庫の中の食材を発見し、暖かい食べ物を同じ避難所
の人々に振舞ったときの、人々の「笑顔」。料理人として原点を思い出し、再び立ち
上がる原動力となったとのこと。
 2番目は、レストラン ラ・シーム(大阪)の高田祐介シェフ。なんと「奄美大島」出身。
身重の女房と旅行に行った思い出深い土地の方ときき、勝手に親近感が増し
話を聞きました。シェフが修行時代に感銘を受けた料理として、「フォアグラと
のり」を使った焼き料理が、他のシェフを刺激。同じ関西の小西シェフの質問
から、スペイン人シェフ、メキシコ人シェフ、そして先の高澤シェフと質問が
咲き乱れ、『これぞ世界料理学会!』といった赴きで、聞いていたこちらも興奮
しました。それにしても、メキシコ人シェフ(スペイン?)が、「のり=塩味」と言い
切っていたのが面白かったです。あと、「フォアグラが甘いものと一緒に調理
するのは西欧では基本」だと知ったのも初めて知りました。(高澤シェフが、
「フォアグラとのり」を、日本で言う「チーズおかき(脂肪酸とのり)の相性の良さ」
と関係するのでは」という発言も、料理人の発想を垣間見るようで面白かった
です)
 昼食をはさんで、北大の安井肇先生による、「昆布」の話。昆布に含まれる
アルギン酸が、調理の造形力を高めるため、「美しい料理の創造に生かして
ほしい」と発表。質疑で、あの奇跡のりんごを広めた、弘前のレストラン山崎の
山崎隆シェフから、「昆布は、放射線の排出に効果があるとの話を聞いた。
原発後の今、研究者として料理人に、もっと昆布を使用すべきだとの提言
をなぜしないのか」との発言に対し、安井先生が研究者としてなかなか明言
できずに四苦八苦する場面も。(この点は、打ち上げのときに山崎シェフと
議論させていただきました。)
 このあと、スペイン人シェフ、イニャキ・ロドリゴ氏が、「コミュニケーションを取るた
めの料理として、自らの創るピンチョス」について語りました。「味を重視しつつ、
見た目の面白さ(客をびっくりさせる)を追求する」料理の数々を映像を交え
楽しくプレゼンしてくれました。
 次のフランス人シェフ、アレクサンドル・ブルダス氏は、札幌の「レストラン・ミヤヴィ」
の横須賀雅明シェフの兄弟弟子。横須賀シェフ自らの通訳を買って出るほどの
仲。店名「Sa.Qua.Na」は、日本語の「さかな」とともに、「Sastanable Quality Natural」
という氏の料理哲学を示すもの。発表も料理技術に終始しがちな昨今の料理界へ
の氏からの提言として、「喜びを分かち合う、楽しむ場所としてのレストラン本来の意味
を思い返そう」という内容。フランス人ならではの、週4日営業+8週のバカンス休暇
を取り、自らが人生で感じた喜びをお皿に表現するという姿勢。食材は注文せず、
その日マルシェにある食材を使い、メニューは1種のみで構成。虚飾を省き、シンプルに
食事を楽しむ雰囲気を作り出そうという氏の発表は、その人柄、横須賀シェフとの
関係性などとあいまって、素朴な言葉で暖かく素敵な発表でした。
(発表のキーワード、『コンビビアリテ(懇親性)」』。食べる人同士が、一緒に時間を
分かち合う、みんなで楽しむ。その雰囲気・空気が懇親性ってところでしょうか。)
 初日最後は、日本料理 銭屋(石川・金沢)の高木慎一郎シェフ。テーマは「金沢
の食文化」。これは聞きたい!と思ったものの、見本市の準備と子供の保育園の
迎えがあり退席。(あとで聞くととても良い発表だったそうで、うーんもったいないこと
したかな。)
 記念パーティも子守で断念。初日は終了です。
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