「みんなちがって、みんないい。」

すず辰野菜

4/2は国連が定めた、「世界自閉症啓発デー」です。世界中で自閉症について知り、考える日です。これに関連して市内でいろいろイベントが開催され、すず辰は3/28-29(土・日)と函館蔦屋書店で開催される、「マルシェあおいろ」に出店してまいります。
(明日3/28(土)は店を休みます。)

自閉症含めた発達障害の人は、脳の働き方が大多数の方と比べ異なり、「脳のタイプ」が違うと言われています。ただし、脳という傍目には見ることができない器官の働き方が異なるため、外見からはわかりづらく「ちょっと変わった人」と認識されてしまうという問題が起きてしまいます。

例えば、発達障害の一つ、アスペルガーの人の場合、「空気が読めない」、「行間が読めない」と言われます。人の表情やしぐさから相手の感情を感じ取ることが苦手で、相手が発している言葉通りにしか受け取れないというのです。(脳のタイプが異なるので、同じものを見ても受け取り方が違ってしまうのです。)

アスペルガーの子は、家にかかってきた電話で、「お母さんいますか?」と言われ、「はい」と答え、すぐ電話を切ってしまったり(相手が母親と電話で話したがっているということが想像できないそうです)。学校で先生に「下校時は家にまっすぐ帰りなさい」と言われ、「先生、ぼくの家には曲がらないと帰れません」と答えたり。

その一方で、ある事柄についてすごくこだわりが強く、旺盛な好奇心と集中力で膨大な知識を得たり、思考したりもします。世の天才と称される方の中には、発達障害だと言われている人がいます(エジソンやアインシュタインなど)。 脳のタイプが異なる分、脳の一部の機能が高度に働くようなのです。

八百屋視点で見ると、まるで「特徴のはっきりした、好みの分かれる品種」を想い起こさせます。

例えば、りんごといえば「ふじ」が定番ですが、これは「食感はシャキシャキした方が好き」という方が多い中、食感がぼけにくく、安定してしている「ふじ」に人気が集まるからです。店主的には、「ふじはどんな農家さんが栽培してもそこそこおいしくなるから普及しているのかな」と思っています。

一方で「おいらせ」という品種は、旬が短く、収穫後1週間もたたないうちに食感がぼけてしまいます。ただし収穫直後は、ちゃんとシャキシャキの食感を持ちつつ、大変蜜が入り、まるでパイナップルのような濃厚な甘さを楽しませてくれます。しかし、楽しめるのはよくて1週間。中には、「柔らかくなってからの方が洋梨のようでおいしい」という方もいますが、「食べごろ」が限定されるのでなかなか市場には出回らない品種です。

しかし、これって時に食べるとめちゃくちゃおいしいです。

パプリカでは、一般的に赤、黄、オレンジの順に人気で、通常スーパーでは赤と黄色くらいしか置いていません。料理人の方と話すと、色目としてオレンジは人参が使えるのでわざわざ(高い)パプリカを使う必要がないそうです。

ところが、農家さんのお勧めは「オレンジ」なんです。甘みが最も強く、栄養価も高いのです。ちなみに、パプリカの風味は赤が一番強く、甘みもそこそこあるので野菜の風味が好みの方には赤をお勧めします。一方黄色は風味・甘みも一番弱いのですが、その分あっさりした味わいでピーマンが苦手な方にも喜んでもらえます。

最後は食べる方の好み次第ですが、それぞれの特徴がわかると自分に合ったおいしさに出会うことができるのです。

さつまいもですと、「べにあずま」が定番ですが、昔ながらの鳴門金時や五郎島金時などの「金時いも」はいもの風味が強くかつ甘みもあるので焼き芋・天ぷらでは断然おいしいです。

そして、最近人気が出ている「安納芋」、色目がオレンジがかった黄色で色鮮やかで、加熱するとねっとりとした食感と強い甘みが出ておいしいいもです。いものサイズ・形がかなりばらつくため、市場に敬遠され、種子島の農家さんが自家用に細々と栽培していたものを宅配の業者さんが目をつけ、一躍人気となりました。

同じ種子島の、果肉が紫の「黄金むらさき」は、でんぷん量が多く、収穫直後の秋口はもそもそしていておいしくないため色目だけの際物扱いですが、年明け2-3月になるとでんぷんの糖化が進み、甘さが強くなるので、この時期現地では重宝されていたりします。

品種品種で味わい方、味わうべき時期があるのです。

八百屋としては、その品種ごとのおいしさ、食べ方、食べる時期をできるだけお客さんに伝え、どれを食べるか選んでもらう努力をしたいと思います。少しでも埋もれた品種のおいしさが日の目を見るよう、「選ぶ楽しさ」を満喫いただけるよう、野菜・果物に代わって語っていきたいと思うのです。

これって、人間関係でもいえないでしょうか。

自閉症などの発達障害の方は、脳のタイプが異なることから、コミュニケーションの仕方が少々異なります。そこで、「ちょっと変わった人」と思われたり、人間関係でトラブルになってしまったりということが起ります。

店主も、以前仕事で関わった人で、「なんでこんな言い方しかできないんだろこの人」と思った方がいました。しかし、もしかして脳のタイプが違うのかも、と考えてみるとその人の言動がすごく理解でき、逆に良い面を冷静に見ることができるようになったのです。

「知る」ってことはとても大事ですね。(ちなみに男性はどちらかというと自閉症の方の脳のタイプに近いそうです。だから「空気が読めない!」とよく女性に怒られるのですね。)

多様なおいしさが食卓を彩るように、多様な人々が互いを尊重し、幸せに暮らす社会は素敵だなぁと思う、八百屋なのです。

最後に、店主の小学校時代の思い出の詩をご紹介します。

金子みすゞさんの「わたしと小鳥とすずと」。

わたしが両手をひろげても、

お空はちっともとべないが、

とべる小鳥はわたしのように、

地面(じべた)をはやくは走れない。

わたしがからだをゆすっても、

きれいな音はでないけど、

あの鳴る鈴はわたしのように、

たくさんの唄は知らないよ。

すずと、小鳥と、それからわたし、

みんなちがって、みんないい。

(金子みすゞ童謡集(JULA出版)より)

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